新緑が目にまぶしい5月。ゴールデンウィークの楽しい時間があっという間に過ぎて、またいつもの毎日が始まりましたね。新しい環境で頑張っている方は、知らず知らずのうちに疲れが溜まってくる頃かもしれません。
「なんだか最近、朝起きるのが辛いな…」 「前は楽しかったことも、なぜかやる気が出ない…」 「理由もなくイライラしたり、気分が沈んだりする…」
もし、そんな風に感じているなら、それは「五月病」のサインかもしれません。
こんにちは、なぎクリニック院長です。皆さんも「五月病」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。実はこれ、正式な医学の病名ではないのですが、多くの方がこの時期に経験する心と体のちょっとした不調を指す、私たちにとって馴染み深い言葉ですよね。
先月のブログでは、「精神科や心療内科って、なんだか行きづらいな…」と感じている方に向けて、その「壁」を一緒に乗り越えませんか?というお話をさせていただきました。今月は、この「五月病」と呼ばれる状態について、そしてそのモヤモヤとした気持ちや体のサインにどう向き合っていけば良いのか、なぎクリニックがどんな風にお手伝いできるのか、優しく、わかりやすくお伝えできればと思っています。
「五月病」って、本当は何なの? – 少しだけ専門的なお話も交えて –
「五月病」は、先ほどもお話ししたように、正式な病名ではありません。でも、なぜかこの時期になると心や体に不調を感じる…というのは、気のせいではないんですよ。
多くの場合、春からの新しい生活(新しい職場、学校、人間関係など)に一生懸命適応しようと頑張る中で、知らず知らずのうちに心と体が疲れてしまうことが原因と考えられています。特に、期待と現実のギャップを感じたり、常に気を張っていたりすると、その疲れは大きくなりがちです。そして、ゴールデンウィークでふっと一息ついた後、また日常に戻るときに、その疲れがどっと出てしまうことがあるのです。
医学的な視点から見ると、このような状態は、新しい環境や生活の変化といった、はっきりとしたストレスに対して、心身のバランスを崩してしまうことが背景にあると考えられます。
国際的な専門家の間では、こうしたストレスによる心身の反応は、ストレスになる出来事が始まってから比較的早い段階で症状が現れ、その原因が取り除かれれば時間とともに和らいでいくことが多いと考えられています。もちろん、ストレスが長く続く場合は、症状も長引くことがあります。
「五月病」と呼ばれる状態が、必ずしもこのパターンに当てはまるわけではありませんが、「新しい環境で頑張ってきたけれど、なんだか辛いな…」という点では、重なる部分が多いんですね。
具体的には、こんなサインが現れることがあります。
- 心のサイン: 気分が晴れない、何をするのも億劫、好きなことも楽しめない、不安で落ち着かない、イライラしやすい、集中できない…など。
- 体のサイン: なかなか寝付けない・途中で目が覚める・寝てもスッキリしない、食欲がない・または食べ過ぎてしまう、頭が重い、肩が凝る、めまいがする、ドキドキする、体がだるくて疲れやすい、お腹の調子が悪い…など。
「これって私だけなのかな?」なんて不安に思うかもしれませんが、決してそんなことはありませんよ。
「もしかして…」と思ったら。無理しないで、今の自分を見つめてみましょう
ご自身の心と体に、どんなサインが出ているか、少し振り返ってみませんか?頑張り屋さんのあなただからこそ、自分の変化に気づいてあげることが大切です。
(以下のチェックリストは、医学的な診断をするものではありません。あくまで、ご自身の状態に気づくためのヒントとして使ってみてくださいね。)
- □ 朝、布団から出るのが以前より辛くなった
- □ 仕事や学業、家事など、やるべきことへの意欲が湧かない
- □ 以前は楽しめていた趣味や活動が楽しめなくなった
- □ 集中力が続かず、仕事や勉強でミスが増えた
- □ 理由もなくイライラしたり、些細なことで不安になったりする
- □ 食欲がない、または逆に食べ過ぎてしまう
- □ 寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、または寝ても疲れが取れない
- □ 頭痛やめまい、肩こり、腹痛などが続いている
- □ 人と会ったり、話したりするのが億劫になった
- □ 周囲から「疲れているね」「元気がないね」と言われることが増えた
- □ 「自分はダメな人間だ」「何もできない」など、否定的な考えが浮かびやすい
- □ わけもなく涙もろくなった
【チェックしてみて、どうでしたか?】
- 当てはまるものが少なかった方: 今のところ、元気に過ごせているようですね。でも、無理は禁物。これからも自分を大切にする時間を忘れないでくださいね。
- いくつか当てはまった方: 少し心が疲れているサインかもしれません。頑張っている自分を認めて、意識して休む時間を作ってみましょう。
- たくさん当てはまった方: もしかしたら、心と体が「少し休ませて」とSOSを出しているのかもしれません。「これくらい大丈夫」と我慢しないで、信頼できる人に話してみたり、この後でお話しする専門家への相談も考えてみてくださいね。一人で抱え込まないことが、回復への第一歩です。
「五月病」になりやすいのは、どんな人? – 自分を責めないでくださいね –
「五月病」と呼ばれるような心身の不調を感じやすいのは、決してあなたが弱いからではありません。むしろ、真面目で責任感が強く、一生懸命頑張る人ほど、知らず知らずのうちに無理をしてしまいがちなのです。
- いつも完璧を目指して頑張るあなた
- 周りの期待に応えようと、つい無理してしまうあなた
- なかなか人に頼れず、一人で抱え込んでしまうあなた
- 新しい環境や変化に、人一倍気を遣うあなた
こんな素敵なあなただからこそ、少し疲れが出やすいのかもしれません。自分の優しさや真面目さを、どうか責めないでくださいね。
今日からできる、心と体をいたわるヒント – 無理なく、少しずつ –
「なんだか調子が悪いな…」と感じたら、まずは自分をたっぷり甘やかして、いたわってあげることから始めてみませんか?難しく考えずに、今日から試せることをいくつかご紹介しますね。
- 心地よいリズムで暮らしてみる
- ぐっすり眠るための準備: 寝る前は、カフェインを控えたり、スマホの光を避けてみたり。温かい飲み物を飲んだり、好きな音楽を小さな音で聴いたりするのもいいですね。毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きることを意識するだけでも、体は楽になりますよ。
- 「おいしい」と感じる食事を: バランスの良い食事が基本ですが、何よりも「おいしいな」「幸せだな」と感じながら食べることが心の栄養になります。旬の野菜や果物を取り入れるのもおすすめです。
- 体を軽く動かしてみる: 激しい運動でなくても大丈夫。お天気の良い日に少しお散歩するだけでも、気分がスッキリしますよ。深呼吸しながら、道端の草花に目を向けるのもいいですね。
- 「ほっ」とできる時間を作る
- あなたの「好き」を大切に: 好きな本を読む、映画を観る、絵を描く、歌を歌う…あなたが心から「楽しい!」と思える時間を、ほんの少しでも良いので作ってみましょう。
- お風呂でリラックス: ぬるめのお湯にゆっくり浸かって、「今日も一日お疲れ様」と自分をねぎらってあげましょう。好きな香りの入浴剤やキャンドルも、リラックス効果を高めてくれます。
- ただ、ぼーっとする時間もOK: 何も考えずに、窓の外を眺めたり、深呼吸を繰り返したり。そんな時間も、心にとっては大切な休息になります。
- 心の持ち方を、ほんの少し変えてみる
- 「完璧じゃなくていいんだよ」と自分に声をかける: 100点満点を目指さなくても大丈夫。「まあ、いっか」「これでも十分頑張ったよね」と、自分を認めてあげましょう。
- 小さな「できた!」を見つける: 大きな目標じゃなくても、「今日は朝ごはんをちゃんと食べた」「短い時間だけど散歩できた」そんな小さな「できた!」をたくさん見つけて、自分を褒めてあげてくださいね。
- 一人で抱え込まないで: 辛い気持ちや不安な気持ちは、信頼できる家族や友人に話してみませんか?「うんうん」と聞いてもらうだけで、心が軽くなることもありますよ。
- 「休む」ことは、悪いことじゃない: 「疲れたな」と感じたら、勇気を出して休みましょう。しっかり休むことも、次の一歩を踏み出すためにはとても大切です。
「もう一人じゃ無理かも…」そう感じたら、いつでも頼ってください
セルフケアを試してみても、なかなか気分が晴れなかったり、体の不調が続いたり…。そんな時は、「これ以上一人で頑張らなくていいんだよ」という心からのサインかもしれません。
- 2週間以上、気分の落ち込みややる気のなさが続いている
- 仕事や学校に行けない、家事が手につかないなど、毎日の生活に困ることが増えてきた
- 食欲がなかったり、眠れなかったりすることが続いて、体も辛い
- 原因がわからない頭痛やめまい、ドキドキなどが続いている
- 「自分なんていなくなればいいのに…」そんな悲しい気持ちが浮かんできてしまう(こんな時は、どうか一人で悩まず、できるだけ早く相談してくださいね)
- 「誰かに助けてほしい」と、心からそう思う
「こんなことで病院に行ってもいいのかな…」なんて、ためらわないでください。風邪をひいたらお医者さんに行くように、心が疲れた時も専門家のサポートを求めるのは、ごく自然なことです。
「五月病かも?」と感じるそのモヤモヤの裏には、医学的に見て、ストレスが原因となる心身の不調や、場合によっては「うつ病」など、他の専門的なケアが必要な状態が隠れている可能性もあります。 専門医に相談することで、あなたの辛さの原因がはっきりし、あなたに合った優しいサポートを受けることができます。それは、あなたが元気を取り戻すための、大切な一歩になるはずです。
なぎクリニックは、あなたの心にそっと寄り添います
なぎクリニックでは、「五月病かな…?」と不安を抱えていらっしゃる方が、安心して相談できる場所でありたいと思っています。私たちは、あなたの言葉にじっくりと耳を傾け、あなたの心と体の状態を丁寧に理解することから始めます。
- あなたの「辛い」を、一緒に見つめます: どんなことで困っているのか、どんな気持ちでいるのか、あなたのペースでお話しください。私たちは、専門的な知見に基づいて、あなたの状態を丁寧に理解し、何が辛さの原因になっているのかを一緒に見つけていきます。
- あなたに合った「これから」を、一緒に考えます: あなたの状態を理解した上で、これからどうすれば少しでも楽になれるか、どんなサポートが必要か、あなたと一緒に考えていきます。
- 心と体を元気にするための、優しいお手伝い:
- お薬に頼らない心のケア(カウンセリング): あなたの気持ちに寄り添いながら、ストレスと上手に付き合う方法や、物事の捉え方を少し楽にするヒントを一緒に見つけていきます。
- 必要な時には、お薬の力も借りて: どうしても辛い症状が続く時には、あなたの状態に合わせて、お薬の力を借りることもあります。その際は、お薬の働きや副作用について丁寧に説明し、安心して治療に取り組めるようにサポートしますので、心配しないでくださいね。
- あなたの毎日を、少しでも楽にするために: 必要であれば、職場や学校と協力して、あなたが少しでも過ごしやすい環境を整えるお手伝い(診断書の発行など)も行います。
先月のブログでもお伝えしましたが、なぎクリニックは「なんだかホッとできる」「安心して話せる」そんな場所でありたいと心から願っています。「五月病」という言葉が、あなたが自分の心と体の声に耳を澄まし、私たちのような専門家と繋がるきっかけになってくれたら、とても嬉しいです。
最後に
「五月病かも…」と感じるその気持ちは、あなたが新しい環境で一生懸命頑張ってきた証です。だから、どうか自分を責めないでくださいね。
大切なのは、その小さなサインを見逃さず、「ちょっと疲れてるんだな」と自分をいたわってあげること。そして、もし一人で抱えきれないと感じたら、いつでも私たち専門家を頼ってください。専門家のサポートを受けながら、あなたの辛さの原因を理解し、あなたに合った方法で対処していくことで、あなたの心は必ず軽くなり、また穏やかな日常を取り戻すことができます。
なぎクリニックは、あなたが笑顔で毎日を過ごせるように、いつもあなたの心に寄り添い、温かくサポートします。
この美しい新緑の季節を、少しでも晴れやかな気持ちで迎えられますように。